「……キラ、おい…キラ!」
はた、と目を覚ますと半分怒って半分呆れたような親友の顔。
「あ…アスラン…………」
親友の名をつぶやき、あれ?と思って顔を起こすと、もう教室の人影はまばらで。
またいつの間にか眠ってしまったらしい。
「全く…HRまで寝てるってどういうことだ?数学の時間も居眠りしてただろ、お前」
「え…嘘っ、もう放課後!?」
「…………………………………」
慌ててキョロキョロと思わず辺りを見回してしまった僕を見て、ハァ、とアスランはこめかみに指を当ててため息をついた。
確かに、教室にかけてある時計を見るともう放課後の時間。
窓の外には校門を抜けて校舎を後にするものさえまばらにいて。
「…………………………………」
アハハと頭を掻くしかなかった僕は、実際そうした。
「なんだってそんなに眠たくなるんだよ、全く」
「仕方ないじゃない、眠いものは眠たいんだから…」
あれだけ寝たのにまだ出てきそうな欠伸を必死に噛み殺して、アスランに抗議。
「そうやって理由になってない言い訳をするとこ、お前本当に昔から変わってないよな」
「アスランこそ、人の傷つく痛いトコを尽いてくるの、ホントに変わってないよね」
「………………………」
据わった目でにらみつけてくるアスランに、僕は冗談だよ、と慌てて言った。
アスランは昔からの幼馴染みで、小さい頃は頻繁に互いの家を行き来していた。
小学生の頃はよくアスランの広い家で鬼ごっこをしたり、僕の母さんの作ったケーキを二人で食べたりしたものだ。
でも中学生の時、アスランは私立のこの学校へ行ってしまった。
アスランは成績優秀で学に問題はなかったのだけれど、この学校は多額の寄付金でたいがい入学は可能らしい。アスランの家はなんとかっていう大きい会社の社長さんで、どちらの点でも問題はなかった。
僕はというと普通の公立に通って平凡な日々を送っていた。たまに互いに連絡を取ったりしていたけど、一緒に過ごす時間は極端に減ってしまって、それでも高校になってまた一緒の学校に入れば、またすんなりと二人で打ち解けて行動を共にしたりしている。
「ともかく」
アスランは片手を腰に当ててから言った。
「ちゃんと睡眠取れよ、じゃないと授業もついていけなくなるぞ」
「ふぁい…」
半ば心配そうなものを含んだ声が降ってきたので、僕は素直に返事した。